【1】ターンバックルを全て同じ長さにそろえます。そうしないとせっかく初期同調をとってもその後の各キャブのスロットルバルブ開度が均一にならないからです。各キャブの押しレバーはフリーの状態にしておきます。
【2】基準になる一番左 1 のキャブのスロットルアジャストスクリューをスロットルレバーから離れるまで一度緩め、今度はスロットルレバーにちょうど当たる所から2回転ほどスロットルアジャストスクリューをしめこみます。この位置で押しレバーを左のみしっかり固定します。 写真3,4
【3】同様に 2 、3 のキャブのスロットルアジャストスクリューをセットしますが、まだ押しレバーは固定しないで下さい。
【4】中央、右のキャブの押しレバー横にある調整レバーを固定します。調整レバーのアジャストスクリューは2〜3mm本体から突き出した状態で押しレバーに当てておきます。尚、スクリュー先はテーパーに加工しておくと微調整しやすいです。 写真5,6,
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5 6
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【5】アクセルリンゲージ(アクセルワイヤー)を少し動かして、1のキャブのスロットルレバーの動き始めと2、3のキャブのレバーの動き始めが同時になるように調整レバーのアジャストスクリューを上下し、3体ともそろったところでアクセルを少々開けた状態を保ったまま押しレバーを仮固定します。それはターンバックルの遊びをキャンセルするためです。
7 8
【6】全開位置の確認をします。キャブ本体が全開以上に引っ張られると押しレバーが滑って同調が狂ったり、スロットルバルブシャフトが歪んだりします。反対にアクセル全開でもキャブが80%開きでは寂しい結果が待っています。まずインマニのリンゲージシャフトに洗濯バサミ?等をはさみ、手動でカチッと止まるまで全開にします。この時洗濯バサミ等がキャブ本体の一部に当たり(写真ではチョークワイヤーの止めボルト)空すべりするようにし次にゆっくり戻します。後は足でアクセルを全開にしたときにも同じ位置(ぎりぎりはさみが接触する位置)になるように踏みしろまたはアクセルワイヤーを調節します。 写真7,8
***キャブにガソリンが入っている場合には、加速ポンプをあまり働かせないためにもアクセルの1/3までは極々ゆっくり開けてください。
【7】全てのパイロット(アイドルアジャスト)スクリュー(写真9)を、一度ゆっくり締め込み止まったところから基準の戻し回転数へ一定に戻します。各種キャブによって戻し回転数が異なるので表4に示します。
表ー4
キャブの種類 |
パイロット(アイドルアジャスト)スクリュー戻し回転数 |
SOLEX40φ,44φ(4型) |
2回転±90° |
SOLEX(ミクニPHH)50φ |
1回転半±90° |
WEBER DCOE 152,151 |
2回転〜3回転 |
WEBER DCOE 9, 50φ |
1回転〜1回転半 |
OER |
2回転〜±180° |
9 9
【8】新品プラグもしくはよくクリーニングされた(バーナー等でよく焼ききった)プラグでもってエンジンをかけ、1500〜2000rpmでしばらく水温計が動き始めるまで暖機します。ここでエンジン回転数があまりに高ければ各スロットルアジャストスクリューを均一に少しずつ戻します。
次にフローメーターを使い各キャブの値が大まかに一定になるように、仮止めしてあった押しレバーを緩め調整レバーのアジャストスクリューを上下させます
今度は、パイロット(アイドルアジャスト)スクリューをゆっくり上下させて回転の一番高い所にセットします。戻し回転数とエンジン回転数との変化(症状)の対処法を表5に示します。ここで注意しなければいけないことは、アイドリング回転数に対してほど遠く高い回転数で行っていても参考にならないということです。初めてキャブを取り付ける場合には、スロットルアジャストスクリューとパイロットスクリューの調整を同時にすばやく行はなくてはいけないので大変ですが、アイドリング回転数にできるだけ合わせて読み取ってください。
表ー5
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戻し回転数の状態と回転数 |
パイロット(アイドリング)ジェットの選定 |
1 |
少し多い状態で高い回転数のピークがくる |
少し薄いので5番程度上げる |
2 |
少し少ない状態で高い回転数のピークがくる |
少し濃いので5番程度下げる |
3 |
上下させても回転数が変化しない |
プラグがかぶっているかパイロット系の詰まり、他で2次空気を吸っている |
4 |
上下させても変化はあるが安定しない |
パイロット(アイドルアジャスト)スクリューの段付き磨耗、プラグのかぶり、その他 |
******上記はあくまでも実走行前のプリセッティングであり、実際実走行においてジェットが落ち着いてくれば5番程度の上下で走行フィーリングの変化はありますが、戻し回転数の変化はほとんどありません。また、パイロット(アイドルアジャスト)スクリューの守備範囲はアイドリング付近が主で、その後スロットルバルブが開き始めると、負圧になったバイパス孔からパイロット(アイドリング)ジェットで定められた混合体が吐出し始めるので、パイロット(アイドルアジャスト)スクリューでエンジン低回転全域を調整しようとすることは無理ですし、できてもいません。
最後は戻し回転数が基準内で、かつ、回転数の上下がその位置を中心として180°多くとも360°で変化します。ベンチではここまでで後は実走行で決定します。
【9】フローメータ−を使用し全気筒を3〜4kg/hで均一にします。キャブ単体での左右差が少差であれば無視するか1kg/h前後の差であれば17mmスパナで少ないほうを開ける方向にスロットルバルブシャフトにねじれを入れてください。極端に差がある場合、またはスロットルアジャストスクリューを最後まで戻していってもエンジン回転が落ちきれない症状があればバラすしかありません。
ここで一度点火時期を確認し、各キャブのスタート時が同時になるようフローメーターで確認しながら調整レバーのアジャストスクリューを微調整し、最後に押しレバーを本固定します。
ここでちょっと(-。-)y-゚゚゚ COFFEE BRAKE
ソレックスでは低回転用ジェットをパイロットジェットと呼び、ウェーバーではアイドルジェットといいます。ソレックスでは2.5番飛びウェーバーは5番飛びで設定されています。又ジェットの番手はソレックスでは単一時間あたりの燃料流量によって決められているのに対し、ウェーバーは♯10が0.1mmになります。したがってソレックスとウェーバーでは同番手でも若手サイズが異なります。特にポンプジェットの差は大きいのでお互いあまり参考になりません。
もう一つ問題なのは、両者のジェットにイミテーション(偽物もしくは外品)も多く出回っており、同じ番号でもサイズが異なるものがよくあります。ソレックスの純正刻印があってもOKではないようです。ウェーバーのポンプジェットも結構ひどいです。仕事上、色々集ってしまうのでよくわかります。ジェットを交換しても思ったような変化がでないのはジェット番号がかわっただけで実は…ということがあります。又、番手は同じでもひとつだけ径がちがうということもあります。中古品からスタートしている人は一度たしかめた方が良いでしょう。
「ジェットの番号は参考にするだけで信用しない」ことです。
【10】後はポンプジェット、メインジェット、(メイン)エアジェットの選定ですが、ここではあくまでベンチテストなので中間〜薄い状態にセットしておきます。実走行に入ってすぐにカブってしまっては全ての判断材料に悪影響を及ぼすからです。パイロット系と同調をある程度きっちり行ってきたのは動き出しをスムーズにしたかったからです。出だしから調子悪いのはたまらなくいやですから。
ではジェットブロック(エマルジョンチューブ)を抜きジェットをセットします。この時もう一度確実に油面をチェックしてください。実走行に入ってから油面を変化させるとセッティングのやり直しになってしまいます。油面については前に記述しましたがここでは下記の方法で速やかに実務を行ってください。
まずジェットブロック(エマルジョンチューブ)を抜いたままエンジンをかけます。20〜30秒したらエンジンを止め速やかに油面ゲージを入れゆっくり引き出し値を確かめます。調整は全記述を参考にしてください。4気筒などでカムのオーバーラップがきつく揺れがひどいエンジンは、落ち着くまで回転数を上げて一定を保っておいてから止めてください。
【11】最後に、実走行に入る前に各パーツの守備範囲をイメージ図として表ー6に、それとポンプジェットについて補足説明をします。
表ー6
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横軸はスロットルバルブ開度であってエンジン回転数ではありません。10〜15%開度でメインジェットが効き始めるので、一般的にいえば3000rpm付近からはもうメインジェットが作用しているわけです。パイロットスクリューは初期で終わり、パイロットジェットは以外に長く続きます。又、ポンプジェットは通常ドライブ時の踏み込んだ時点で常に効いてしまうので、どの開度でも同じ効力があるという意味で上段に均一に表示しました。
ポンプジェットはその番手で吐出時間が異なるので、参考までにソレックスの場合を表−6に示します。 |
表ー6
ポンプジェット番手 |
40 |
45 |
50 |
55 |
吐出時間(ノーマルポジション時)秒 |
1.3 |
1.1 |
0.9 |
0.8 |
例えば、ワインディングでアクセルをOFFからONにした場合、(シフトアップ、シフトダウン、踏み直し時?)に♯45を選択していると1.1秒間は吐出続けているので、ほぼ常時作動(作用)していると思って頂いて結構です。数値上では感覚的に短いと感じますが、実際ドライブするとそうでもないはずです。
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